症例報告:慢性片頭痛による不登校の2症例

症例報告

症例報告:慢性片頭痛による不登校の2症例

2026.05.15

~「激しい頭痛」と「強いだるさ」という主訴の多様性と、登校時の社会的ストレスへのアプローチ~【背景・目的】

思春期の慢性片頭痛は、成人とは異なり「頭痛」以外の身体症状が前面に出ることが多く、不登校や起立性調節障害(OD)との鑑別や併存が問題となります。今回我々は、不登校となった10代の慢性片頭痛患児において、1名は典型的な「激しい頭痛」、もう1名は「だるさ(倦怠感)」を主訴とし、表れ方が全く異なった2症例を経験しました。両症例とも片頭痛予防治療により劇的に改善し元気に登校可能となったため、その臨床的特徴と周囲の心理的環境(スティグマ)を含めて報告します。

【症例提示】

症例1(頭痛先行型):10代 [性別]

  • 主訴: 不登校、朝起きられない(激しい頭痛のため)
  • 現病歴: 〇ヶ月前から朝の起床時に「頭痛が酷くて物理的に起き上がれない」状態が持続し、不登校となった。たまに体調が良く遅れて登校すると、周囲(クラスメイトや教員)から「サボりではないか」というような白い目で見られることが苦痛であり、それがさらに心理的負担となっていた。
  • 診断: 慢性片頭痛
  • 治療経過: 片頭痛予防薬として[処方薬名]を導入。頭痛の頻度と強度が速やかに軽減し、朝スムーズに起床できるよう改善。現在は元気に登校している。

症例2(だるさ先行型):10代 [性別]

  • 主訴: 不登校、朝起きられない(全身の強いだるさのため)
  • 現病歴: 朝の起床時、頭痛よりも先に「身体が動かないほどのだるさ(倦怠感)」が強く現れ、結果として起き上がれず不登校となった。本人は「だるさ」を主訴として認識しており、頭痛はその背景に隠れがちであった。症例1と同様、たまに登校した際に周囲から白い目で見られる経験をしており、登校に対する強い心理的抵抗感(忌避感)を形成していた。
  • 診断: 慢性片頭痛(随伴症状または予兆として倦怠感が強く出現するタイプ)
  • 治療経過: 慢性片頭痛に対する適切な予防治療([処方薬名])を開始。治療に伴い、主訴であった朝の「だるさ」自体が消失し、頭痛発作もコントロール可能となった。身体的苦痛の消失とともに登校への意欲が戻り、現在は問題なく登校できている。

【考察】

本2症例の経過から、思春期不登校における慢性片頭痛の診療において、以下の3点が重要であると考えられます。

  1. 主訴の多様性(頭痛 vs だるさ):
    片頭痛は単なる「頭の痛み」だけでなく、脳の過敏性によって自律神経症状や強い倦怠感を伴います。症例2のように「だるさ」が主訴である場合、精神的な怠けや起立性調節障害として片付けられ、片頭痛が見落とされるリスクがあります。「だるさで動けない」10代の不登校児に対しても、背景にある片頭痛の有無(家族歴や光・音過敏など)を丁寧に問診する必要があります。
  2. 不登校を長期化させる社会的ストレス(スティグマ):
    両症例に共通していた「たまに学校に行くと周囲から白い目で見られる」という経験は、患児の心理的QOLを著しく低下させます。片頭痛の痛みが一時的に治まっても、「また周囲に変に思われるのではないか」という予期不安から、不登校が慢性化する悪循環(二次的障害)を生みます。
  3. 予防療法の多面的な効果:
    適切な予防療法は、頭痛そのものを減らすだけでなく、付随するだるさ(倦怠感)をも改善させました。身体的な安定が得られることで、周囲の視線に対する心理的レジリエンス(回復力)も高まり、結果として不登校からの脱却・社会的復帰を強く後押しすることが示されました。

【結語】

10代の不登校の背景にある慢性片頭痛は、「頭痛」だけでなく「だるさ」として表出されるケースがあります。本人が周囲の白い目に晒されることで生じる心理的ストレスも考慮しながら、早期に適切な予防治療を導入し、身体・心理の両面からサポートを行うことが重要です。

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