症例:10歳女児、近隣市より受診
2025.08.19
現病歴:
6歳頃より頭痛を自覚していたが、当初は程度・頻度・持続時間ともに軽度であった。小学校4年生になり運動を開始した頃より、頭痛の頻度と強度が増悪した。運動を中止すると一旦は軽快したが、再開すると再び増悪した。頭痛が強い時には登校できず、学校を欠席することもあった。現在は登校は可能だが、時折保健室で休むことがある。
アセトアミノフェンや治打撲一方を使用するも効果は認められなかった。近隣の脳神経外科でCT・MRIを施行されたが異常は指摘されず、鎮痛薬の投与が行われた。その後、大規模病院にて検査入院を受け、起立性調節障害(OD)の診断を受けた。しかし、症状と診断の整合性に疑問を抱いた家族は、当院を受診した。
日常生活支障度:HIT-6は78点と最重症。
頭痛の特徴:
- 部位:前頭部
- 性状:拍動性(ズキンズキンと脈打つ痛み)
- 程度:7–10/10
- 随伴症状:悪心・嘔吐、食欲低下、光過敏・音過敏
- 前兆:なし
経過:
ほぼ毎日頭痛が出現しており、慢性片頭痛と診断した。予防治療を開始した。
考察:
本症例は大規模病院で「起立性調節障害による頭痛」と診断されていたが、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)において「起立性調節障害による頭痛」という診断名は存在しない。片頭痛の診断基準を満たしていたにもかかわらず、誤ってODに帰属されたことが問題点と考えられる。また、診断後には「メンタル面の問題」に焦点が移ったため、家族は不信感を抱き当院を受診した。地域的にも、同様の診断傾向がある印象を受ける。