私は鹿児島県で脳神経外科医として勤務していた後、鹿屋市に「田村脳神経外科クリニック」を開院しました。

そのころ、家族がひどい頭痛に悩まされていたのですが、当時の頭痛治療はまだ未発達で、国内には参考になる資料が少なかったため、あらゆる角度から情報を集めようと思いました。

そこから治療法を模索していったという感じです。
初めは「家族を助けたい」という一心で取り組みましたが、その思いがきっかけで同じように頭痛に悩む方々を支援する道を選びました。

福岡県内でよく利用されている「小児心身医学会ガイドライン」によると、小児の頭痛には自律神経に関連した症状が多いとされています。

このガイドラインでは、自律神経の乱れが原因で頭痛が発生する可能性があると述べられており、頭痛が発生した際に自律神経失調症と診断されることも少なくありません。

しかし、私は自律神経失調症と頭痛は必ずしも同じものではないと考えています。
実際に、当院に訪れた13歳の患者様は、2年間「自律神経失調症」と診断され続け、様々な治療を受けましたが、効果が感じられないということでお困りでした。

そこで、頭痛の原因を調べるためにさらに詳しい検査を行ったところ、実際には片頭痛であることがわかりました。
ある資料によれば小児頭痛全体で自律神経失調症による頭痛は2%足らず、心身症による頭痛は7%、片頭痛は60%というデータがあり病気を考えるべきは頻度の多いものからその可能性を判断していくのが正攻法と考えます。

このように、頭痛の種類を正確に診断し、適切な治療を行うことが重要です。
片頭痛の治療を開始した結果、症状は回復に向かっています。
お子様の頭痛も、単なる自律神経の乱れだけではなく、片頭痛やその他の疾患が関係していることもありますので、専門的な検査と治療を受けることが大切です。

幼児期から中学生までのお子様も、大人と同じくらい頭痛を抱えることが多いと思います。

特に、小学生の間は男の子に片頭痛の症状が見られることが多いですね。
その後思春期に入る年齢になると、中高生の女の子に頭痛の症状が増えてきます。
頭痛の原因はさまざまで、睡眠不足や過度なダイエットなど生活習慣も大きく影響しますが、女性の場合はホルモンバランスの変化も要因の一つとなります。

生理前や生理後のホルモンの上下動は、頭痛を引き起こす原因の一つです。
思春期の女性に片頭痛が増えるのは、そのためです。
また、妊娠や出産、更年期におけるホルモンバランスの変化も、女性が長期的に頭痛に悩まされる原因となります。
特にご両親が片頭痛を持っている場合、お子様にも同じ症状が現れるリスクが高いと言われています。

小児の片頭痛治療では、大人と同様に「生活習慣の見直し」と「薬物療法」の両方を組み合わせて進めていきます。

ただし、治療にはお子様一人ひとりの生活環境や体の状態に合わせたアプローチが必要です。

例えば十分な睡眠が取れていないことが頭痛の引き金になっているケースでは、まず睡眠リズムの改善を優先します。小学生には9-12時間の睡眠が必要です。

夜更かしやスマートフォンの使いすぎを見直し、朝ごはんをしっかり食べる、水分補給を意識するなど、基本的な生活習慣を整えることから始めます。
片頭痛の薬については、すぐに「これが正解」と決まるわけではありません。
お子様は個人差が大きいため、実際に服用しながら効果を確認し、調整を重ねていく必要があります。
また、治療中に気をつけたいのが「自己判断による服薬の中断」です。

症状が一時的に軽くなっても、勝手に薬をやめてしまうと、片頭痛が再発したり悪化したりするリスクがあります。先日も片頭痛の治療を受けて症状が軽くなりお子様が薬を飲みたがらなくなり親御様も子供に薬は余り飲ませたくない思いもあり薬を自己中断された所、3か月目に激しい頭痛と嘔吐が起こり点滴をしに受診された方がお見えになりました。

医師の指示に従いながら、長期的な視点で治療を続けるようにしましょう。

小児の片頭痛は「成長すれば自然に治る」と見過ごされやすいものですが、中学校、高校などの大切な時期に頭痛で生活に支障が出ると勉強、運動もできない方もらっしゃいます。適切な対応を行えば、学校生活や日常の負担をぐっと減らすことができます。

薬だけに頼らず、生活習慣と両輪で改善を目指すことが、治療の第一歩となります。

まずは「頭痛に悩まない快適な生活」「寝込むことのない生活」「頭痛の発生を月4回以下、鎮痛剤の使用は2回以下に抑えること」を目標に掲げ、日常生活で支障きたすことがないよう治療を進めていきます。

通常、薬の有効性の判定には2～3ヵ月を要しますが、当院では約3週間でその判断を下すことができ、無駄に薬を飲み続けることを避け、効率的に最適な薬を見つけることに注力しています。

適切な薬が見つかれば、その後、6～8ヵ月にわたり同量を服用し、最終的には薬の服用を段階的に減らし、最終的にゼロにすることを目指します。