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片頭痛とは

片頭痛は、お子様にも大人にも見られる症状です。
その中でもお子様に見られる片頭痛を小児片頭痛と言います。
小児片頭痛は、11~12歳くらいの小学校高学年に多く発症します。発症が早いお子様は3-4歳位から頭痛を訴えます。
片頭痛の原因はその子によってさまざまで、例えばストレスにさらされているときや激しい運動後、また、寝不足の時に起こるという子もいれば、人混みで頭痛が起こるという子もいます。
頭痛が起こる場所は前頭部が一般的に多いですが、その後左右、そして後頭部など、片頭痛の進行度によって異なっていくこともあります。
お子様にこんな症状ありませんか?
- 「ズキンズキン」と脈打つような痛みが起こる
- 嘔吐や顔面蒼白など、見ていて「具合が悪そう」という状況になる
- 頭痛だけでなく、腹痛を訴えることがある
- 朝「頭が痛い。学校を休みたい。」というが、しばらくすると回復する
- 天気が悪い日や寒い日などに決まって頭痛を訴える
- 両親と同じタイミングで頭痛を訴える
- 「目の前がキラキラする」など視覚の異常を訴える
- 「眩しい」「うるさい」と、周囲の環境に対する不快症状を訴える
など
大人の片頭痛との違い
子どもの片頭痛は「大人とちがうの?」と聞かれることがあります。
確かに、小児片頭痛では頭痛だけでなく嘔吐を繰り返す周期性嘔吐症や腹痛として出ることもあり、症状の出方には少し特徴があります。
とはいえ、片頭痛という病気そのものは、大人と本質的には同じです。
診断の基準は少し異なりますが、治療法も基本的には変わりません。
だからこそ、「とりあえず様子を見よう」「軽い風邪かも」と放っておかずに、早めに専門の医師に相談することが大切です。
片頭痛と間違いやすい疾患
小児片頭痛は、頭が痛いという訴えだけで判断できるものではありません。
頭痛は、感染症や脳疾患のサインであることも考えられるため、しっかりとした診断基準に則って診察を行います。
結論から言うと、小児頭痛の大半は片頭痛に関連するものが占めています。
下記の表を見ていただくと分かるように、頭痛外来の診断も、片頭痛に分類されるものが圧倒的に多いのが現状です。
小児科クリニック頭痛外来受診児の初診時診断
上記を踏まえて、以下では片頭痛と間違われやすい小児頭痛の種類をいくつか紹介します。
感染症による頭痛症状
お子様が「頭が痛い」と言うと、多くの親御様はお熱を計ると思います。
そして発熱があった場合、風邪症候群やインフルエンザといった感染症を疑うのではないでしょうか。
実際、お子様の二次性頭痛(何か別の病気が原因で起こっている頭痛)では、インフルエンザや溶連菌感染症などの病気が大多数を占めています。
慢性連日性頭痛
慢性連日性頭痛は、名前の通り「毎日のように頭痛が起こる」という状態です。
厳密に言うと片頭痛が長引いていることもありますが、慢性連日性頭痛の全てが片頭痛ではないため、丁寧な診断が重要です。
自律神経失調症による頭痛症状
頭痛を訴えるお子様を連れて医療機関を受診した際、自律神経失調症による頭痛であると言われたことがある親御様は少なくないと思います。
確かに、自律神経失調症では頭痛やめまいなどの症状が起こることもありますが、必ずしも小児頭痛=自律神経失調症ということではありません。
緊張型頭痛
上記のような「この疾患かもしれない」という要素を除外していき、最終的にどの基準にも当てはまらなかった場合、緊張型頭痛と診断されることがあります。
緊張型頭痛にも慢性的なものがあり、その場合は慢性連日性頭痛に分類されます。
とはいえ小児頭痛に関しては、ほとんどが片頭痛に関連するもので、緊張型頭痛であるケースは片頭痛の半分にも満たないのが現状です。
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片頭痛の症状と痛み

片頭痛の初期症状としては、目の前にチラチラと光が見えるようになります。
そして、視界の違和感がおさまると同時に「ズキズキ」「ガンガン」といった頭痛が現れてきます。
その後、締め付けるような痛みに移行して頭重感となり、徐々に消失します。
片頭痛は、大人で4時間から72時間、子どもで1時間から48時間ほど持続すると言われています。
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片頭痛の治療
当クリニックでは、片頭痛発作を抑制するための治療として、新しい片頭痛予防薬を採用しています。
「片頭痛が予防できるの?」と驚かれる方も多くいらっしゃいますが、
片頭痛のメカニズムが解明されてきた現代では、未然に痛みを防ぐための治療も確立されつつあります。
片頭痛を抑制するための薬物療法
抗CGRP抗体製剤であるエムガルティ(ガルカネズマブ)、アジョビ(フレマネズマブ)、抗CGRP受容体抗体製剤であるアイモビーグ(エレヌマブ)の皮下注射を実施しています。
抗CGRP製剤について
抗CGRP製剤は、2021年に保険適用された内服治療薬での予防効果が見られなかった方、生活に支障をきたすような頭痛を抱えている患者様が対象となります。
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片頭痛と日常生活の関係
頭痛と生活習慣の乱れ
片頭痛は、睡眠不足によって引き起こされることがあるため、まずは規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠時間を確保することを心がけましょう。
小学生以下のお子様は10~12時間の睡眠を、高校生は8~12時間の睡眠を意識してください。
頭痛と悪天候
片頭痛の方はよく「雨が降ると頭が痛くなる」と言います。
実際に、雨や曇りの日に頭痛でお悩みの方は多くいらっしゃいます。
これはお子様にも同様に現れ、ご両親が片頭痛持ちの場合は同じタイミングで頭痛を訴えることも多く見られます。
特に気圧の変動や気温、湿度、天候の急激な変化は、片頭痛や緊張型頭痛を引き起こします。
こうした症状は「気象病」とも呼ばれています。
頭痛と服薬・漢方
日常的に鎮痛剤を飲んでいると、少しずつ薬の効果を得られなくなってしまうことがあります。
そうすると、より頻繁に薬に頼ってしまうことになりますが、こうした悪習慣は頭痛を悪化させる可能性が高くなるため注意が必要です。
市販のお薬を使用する場合は、依存性が少なく副作用のリスクも低い漢方がおすすめです。
片頭痛に悩んでいる方の場合は、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)という漢方が効果的です。
頭痛を和らげるための食べ物・飲み物
頭痛自体を治療する効果はありませんが、一時的に和らげたいという場合にはカフェインを含む飲み物がおすすめです。
また、マグネシウムやビタミンB2を含む食べ物も片頭痛予防に効果があります。
おすすめの飲み物
お子様の場合、コーヒーやエナジードリンクは避け、緑茶やココア、紅茶などで少量のカフェインを摂取するようにしましょう。
過剰に摂取すると眠れなくなってしまったり気分が悪くなってしまったりすることがあるため、あくまでも少量を摂取することがポイントです。
おすすめの食べ物
わかめや海苔などの海藻類、さば、えびなどの魚介類、椎茸などのキノコ類、ほうれん草、ブロッコリーなどの野菜、そのほかにもマグネシウムやビタミンB2はさまざまな食品に含まれています。
また、豆腐、バナナ、お子様の好きなチョコレートもおすすめです。
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頭痛でお悩みの際には、
早めの受診が大切です
お子様の「頭が痛い」は、成長や疲れのせい、軽い風邪と見過ごされがちですが、実は片頭痛の可能性もあります。
小児片頭痛は、大人よりも症状がわかりにくく、嘔吐や腹痛を伴うこともあります。
「ただの頭痛」と思って放置すると、日常生活や学業に影響が出ることもあるでしょう。
早めに専門の医療機関を受診すれば、原因を明らかにし、適切な対処や予防ができるようになります。
お子様が笑顔で過ごせるように、「気のせい」や「我慢」で済まさず、まずはご相談ください。